断熱材について
今回は断熱材のおはなしです。
皆さんは『断熱材』と聞いてどんなものを想像されるでしょうか?
『断』『熱』という字が使われているのだから、熱を遮ってくれるものというイメージでしょうか?
熱を 断 ってくれるもの。そう思いますよね。
当たらずとも遠からず。と言いたい所ですが、僕はあえて違うと答えます。
断熱材も、もちろん熱を伝えます。伝えるのを遅くするもの。それが断熱材です。
いずれにせよ、断熱材は住まいの快適性を実現するのに大きな役割を担っているのは、間違いありません。
だからこそ、断熱材を選ぶことが非常に大事になります。
施工者や設計士にまかせっきりにするのではなく、ある程度の情報を自分で収集することは、大切です。
兼好法師が『住まいは夏をむねとすべし』と言った事を引き合いに出すまでもなく、日本は、高温多湿の国です。
だからこそ、熱の管理と同時に、いやそれ以上に湿気の管理が非常に大切です。
住まいは、人間の生活にとって、基本となるものです。
地域には、その地域にあった住まいがあります。
ある地域にある、優れた工法が、他の地域でも優秀な工法である保証はありません。
日本の伝統工法は、日本の高温多湿という、気象条件をよく考えた、優秀な住まいです。
木を知り、木のよさを活かした素晴らしい工法です。
帝国ホテルの建築で来日した、ライトは日本の手刻みの技術を見て
『日本人が世界で一番木のことを知っている、また高度な技術を持っている』と驚いたそうです。
しかし、その当事者たる日本では、伝統工法が忘れられかけ、プレカットという工場生産の木造住宅に取って代わられています。
話が、断熱材のことからそれてしまいました。
断熱材の断熱性能を比較する場合、一般的に、熱伝導率と熱抵抗値が用いられます。
熱伝導率は、物質固有の熱の伝えやすさを表わす数値で、 数値が小さいほど熱を伝えにくく、断熱性能に優れた材料であるといえます。
ただし、気をつけなければならないのは、
熱伝導率は材料の厚みに関わらず、材質自体により、決まる数値であるということです。
材料の厚みも、考慮した断熱性能は、熱抵抗値で表わされます。
つまり、家の断熱材として使用する場合に、断熱材の性能を検討する際には、熱抵抗値で比較する必要があります。
熱抵抗値は、熱の伝えにくさを表わす数値で、
数値が大きいほど、熱を伝えにくく、断熱性能に優れているといえます。
たとえば断熱材としてよく使われる材質に「グラスウール」というものがあります。
グラスウール100㎜厚の場合の熱抵抗値は「2.0」。
こちらもよく使われる「硬質ウレタンフォーム」の熱抵抗値は、50㎜厚で「1.9」。
すなわち、グラスウール100㎜のほうが断熱性能に優れているのです。
コストパフォーマンスも、グラスウールのほうが優れています。
当たり前と思われていることも、きちんとした数値で検証すると、案外間違いが多いものです。
また、ウレタンは比較的安価で、断熱性能が優れているため、よく断熱材に使用されています。
しかし、ウレタンは燃えると「シアンガス」という猛毒が発生することを知らない人は多いです。
火事による死因内訳で火災による直接の焼死が少ないのは、この種のガスによる死者が多いからです。
住宅に携わるものとして、一般的な思い込みだけで材料を選ぶのではなく、
きちんと自分で情報を集め、検証した物以外は使用しないという姿勢が大事であると考えています。